2017年8月1日火曜日

漫画ビブリオバトル2017年7月

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2017年7月の漫画ビブリオバトルのメモ。
テーマについて自分の中の再定義がなかなか面白かった。


今回のテーマは「あなたがSFだと思う漫画」


SFは「サイエンス・フィクションは、その時にそう呼ばれたもの」
と定義する人がいるくらい定義が曖昧だ。

その中で紹介されていた以下が一番しっくり来たので紹介する。

書評家の大森望は、SFの指標として

「科学的論理を基盤にしている。
また、たとえ異星や異世界や超未来が舞台であっても、
どこかで「現実」と繋がっている(ホラー、ファンタジーとの区別)」

「現実の日常ではぜったいに起きないようなことが起きる(ミステリとの区別)」

「読者の常識を覆す独自の発想がある
(センス・オブ・ワンダーまたは認識的異化作用)」

「既存の(擬似)科学的なガジェット
またはアイデア(宇宙人、宇宙船、ロボット、超能力、タイムトラベルなど)が
作中に登場する(ジャンル的なお約束)」

の四つをあげている。

この中でも個人的にとりわけSFだなと感じるのは
4つ目の"ジャンル的なお約束"に含まれるであろう、
宇宙、もしくは、宇宙人が関わっているものだ。

そこで、今回紹介する作品は市川春子の『月の葬式』。
市川春子は2006年の四季賞『虫と歌』でデビュー。
以降、短編をアフタヌーンで掲載し続け、2012年からは『宝石の国』の連載を開始。
秋からはアニメ化される。

作品に話を戻そう。
『月の葬式』は2冊目の短編集『25時のバカンス』に収録されている、
2011年にアフタヌーンに掲載された作品。
なんでもできる、先が読めてしまう主人公はある種の天才だ。
大学受験の日にこれから先があまりに読めてしまった感覚から
衝動的に行き先の違う電車に乗ってしまう。
北の果てで出会ったのは地元民にアイドルの如く、人気と信頼を集める
「間」という青年だった。
二人の出会いと二つの問題。旅は続く。

SFとしてのおすすめポイント

・ガジェットとしてのドキドキ感
一つのキーアイテムとして「間」が無くしてしまったリモコンというのがあります。
何のリモコンなのか、なぜ無くしたのか、そのリモコンの作用を見ていただきたいです。
リモコンが動く様、形は日常からかけ離れているのですが、
ある種のノスタルジーを感じるところが良いです。

・大きな見せ場
私が掲載誌で読んだ時にページをめくる手が止まってしまった箇所が2つあります。
あまりに衝撃的で頭と心が追いつきませんでした。
それを説明する話が続きゆっくりと通常運転に戻ります。
衝撃の強さと説明による揺り戻し。ここはSF的だなあと再読して改めて感じました。

・理性と感情
この短編には大きな課題が与えられています。
主人公はその課題の前に立たされるわけですが、
その向き合い方が実に理性的でここがこの作品をSFとして勧める
大きな理由の一つになっています。
誰かに祈るわけでも奇跡を願うわけでもなく、
自分の能力でできることを考えるわけです。
ですが、その課題へ向かうのはあくまで感情が起因になっているのが素晴らしいです。
howについては理性で、whyに対しては感情でというのがとても好きなところですね。

市川春子の素晴らしさは5分じゃ足りないので、
また別の作品を紹介する時に話したいと思います。

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