2016年10月31日月曜日

漫画ビブリオバトル2016年10月

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今回は4票もらえて久々に勝たせてもらったので、原稿を公開。


朝の向かう道で書いているんだが、読み返している回数が多いのと
好きな部分がはっきりしているのでまとめるのは早かったと思う。


働く人の漫画。
選んだのは路地恋花。
goodアフタヌーンで2009年から2013年に掲載。作者は麻生みこと。他の作品としては弁護士を主人公にした『そこをなんとか』があり、ドラマ化もされている。

路地恋花は大家さんの酔狂で、若手の職人に安く住居兼店舗を貸している職人長屋で起きる仕事と恋の話を連作形式。

良いところ
・職人の仕事の細かさがしっかり取材されている。
・仕事のやりがい、つらさ、こだわりがちりばめられている。
・恋の話がいろんなバリエーションで楽しめる。

仕事の話。
個人的に仕組みの話、過程の話が好き。NHKのプロフェッショナルとかが好きといえば伝わる?自分の手に来るまでの間にどんなふうに手を加えられて、意思が込められているかを感じられるのはとても嬉しい。仮に本なら材質、大きさ、フォント選び。ただ本の形になれば良いのではなくて、そこに注ぎ込まめる情熱が愛しい。それぞれの仕事ごとに丁寧に説明してあって、それなのにそこで話の流れを止めることなくさらりとしている手腕が良い。

仕事のやりがいの話
仕事の話なので良いことも悪いこともある。なんでこの仕事をしているのか、自分でも分からなくなっているときに、他人のふとした一言で核心に気がつく。そういう場面にグッと来る。エピソードとして好きなのは銀細工の職人が嫁とったら食わしていけるのか?と試練を与えられる話。趣味の延長と事業の違い、人を使うこと、規模の違いに困惑しながら奮闘して、一回り大きくなるところはとても良い。

恋の話
題名にもある通り恋の話がもう一つのテーマ。
歳の離れた恋もあり、長年続いた恋もあり、いろんな恋模様をみてニマニマしたり、ぇーってなるのが楽しい。好きなのは靴屋の話。父子家庭の子供に靴を作ることになり、靴作りの工程で会うたびに、ここんちの子になりたい、ここんちの母になりたい、ここんちの嫁になりたいと進んでいく心。靴の完成とともに訪れるラストがとてもジーンとくる。
一つひとつのエピソードがとても好きなんだが、おまけに加えられている"やむおち"という1ページ漫画がまた良い。本編で語られなかった、その後の話もあるが"実は"という意味で明かされるエピソードがいい。これは本編を読んでからにまにまして欲しい。

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